NPO法人ステップワンの会報第16号に掲載した文章です。

 

 

こ の 一 年

 

~ 「そよ風のように街に出よう」の終刊と時代の終焉 ~

 

                          宮崎 吉博

 

障害者問題に関わる人たちの間で「西の『そよ風』、東の『福祉労働』」と呼ばれるほど評価の高い「そよ風のように街に出よう」という雑誌が終刊することになり、大きな衝撃とともに落胆を隠せない多くの人たちが全国にみえます。私自身もその一人なのですが、ステップワンの歴史に関わる部分もあるので少しお話しします。

 いまNPO法人ステップワンの30数年に及ぶ歴史の資料や写真をまとめようと考えています。昨年には職員が大幅に入れ替わり、「地域Aからの出発」や「亀の子会」と言っても「何のことなの?」という状況になりました。現在も残っている創立メンバーは数名という状態ですから当たり前と言えば当たり前のことですが、少し寂しい気持ちにもなります。

 また、この数年の間に当初の理念が会員の間でも希薄になり現状とのギャップが生まれてきましたので、歴史をさかのぼり伝えていく必要を感じていました。いま職員の皆さんには、ちょうど30年前に書いた「はじめの一歩」というレポートを読んでもらっています。そこに「そよ風のように街に出よう」(この後「そよ風」と略)に関連する話が出てきます。

 いまを遡ること31年、1986年に伊勢市で「もなちっこ人形」という名前のぬいぐるみが大量に売れ、販売元の運営委員会から「どうしてそんなに売れるのか?」という妙な問い合わせがありました。そこで大阪の委員会に出向いたところ、ステップワンの前身である「障害者の将来を考える会」に興味を持っていただき、「協力するからコンサートをやってみないか?」という話になりました。そして翌1987年「長谷川きよしコンサート」が実現します。

 これがステップワンチャリティコンサートの第1回目になります。その企画のきっかけが「そよ風」ということになります。大阪で出会ったのが「そよ風」編集長の河野秀忠さんや障害者運動家でデザイナーでもある牧口一二さんでした。その後、ステップワンのチャリティコンサートは17回にも及びました。(因みに第2回の1988年「小室等コンサート」で、伊勢市観光文化会館の舞台で小室さんが「もなちっこ人形」を手に持って紹介している写真が出てきました。なつかしい思い出です。)

 

「そよ風」の編集長は河野秀忠さんという人で何度も三重県におみえになり、ステップワン作業所でも講演をしていただいているのでご記憶に残っている方もみえると思います。何か事業を起こせないか相談した時には、「伊勢うどんを全国販売して儲けなはれ」と助言をいただきましたが、未だに実現していません。とにかく事業の立ち上げには良い意味で貪欲な方で、豊能障害者労働センターを始めさまざまな事業所や店舗を運営する傍ら、「あっ、そうかぁ」(りぼん社)などの障害児教育の創作教材等を執筆してみえます。

 その河野さんが昨年の6月に自宅の玄関を出たところで転倒し救急車で病院に運ばれ、緊急手術で一命を取り留めたものの現在もリハビリ中とのことです(一日も早いご回復をお祈りしています)。 

 

河野さんの転倒事故、「そよ風のように街に出よう」の終刊と重く辛いニュースが続く中、相模原障害者殺傷事件が起こりました。何が残念と言って、この大事な時期に「そよ風」が終刊を迎えたことが残念で悔しくてなりません。

 東の「福祉労働」は153号で早速「相模原・障害者施設殺傷事件」の特集を組み、「そよ風」も90号でマスメディアへの「応え」という形で特集しています。

 30年前と比較すると障害者が街に出る機会は圧倒的に増え、障害者へのさまざまな施設整備やサービス等が行われるようになり、障害者の暮らしは大きく変わりました。しかし障害者差別解消法が施行された年に「障害者の生を真っ向から否定する」事件が起こりました。一体、この30数年は何だったのか? と考え込んでしまいます。

 車いすの障害者は駅で階段の昇降をせずともエレベーターで移動できるようになりました。しかし駅の階段で、車いすを駅員さんや一般の人の手を借りて移動した時の方が関係は密だったような気がしてしまいます。「馬鹿なことを!」と言われそうですが、配慮やサービスで見えなくなっていきそうな人と人との関係の行く末が気がかりでなりません。何か一つの時代が終焉を迎えたようで不気味でなりません。

 

そんな時、子供問題研究会の機関紙「ゆきわたり」で痛快な文章を見つけました。代表・篠原睦治さんの和光大学での教え子である村上健一さんの「正月、電動車いすで、厄払いに行ったとき」という文章です。ひと騒動を予感しながらも大厄が気になって電動車いすで地元の神社に出向いた村上さん。案の定、神職さんや巫女さんを巻き込んでの厄払いになるのですが、この間の人の動きが好い意味で実に愉快でおもしろいのです。

 ところが、この体験談をFacebookにアップしたところ、ある人から「両者建設的な対話がなされて、しっかり合理的配慮をしてもらえましたね、いいお話です」のコメントが来てがっくり。村上さんは「久し振りに街中で、ごちゃごちゃとせめぎ合ったぞと思って、まだまだ世の中捨てたもんじゃない、あったかいよ」とアピールしたかったのに予想外のコメントにショック。私が思うに、このズレは致命的な感じです。合理的配慮なんぞよりはごちゃごちゃとしたせめぎ合いを求める村上さんは、「『合理的排除』、あっ、いや『合理的配慮』でしたね。私は好かんです、この名称。どんなものでしょうか。」と締めくくっています。(この文章は是非とも皆さんにも読んでいただきたいので、村上さんの了解を得られればステップワンのホームページに掲載したいと思っています。)

 私たちは合理的配慮に名を借りて、またしても「共に生きる」から外れていくのではないでしょうか。健常者中心の合理的配慮の研修会やマニュアルの作成、法と引き替えに何かを失ってしまうような気がしてなりません。

 

この1年、近しい人が病に倒れたり亡くなられたり、色々なことが身辺だけでもありました。「齢を重ねるとはこういうことか・・・」と、今更ながら感じています。それ以上に何か時代が大きく変わり、一つの時代が終焉を迎えているような気がしてなりません。

 いま発信しておかなければならないこと、それだけを考えていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで楽しい食卓を!!

 

「ぱれっと食堂」へのお誘い

 

NPO法人ステップワン

 

 「ぱれっと」はNPO法人ステップワンが運営する障害者のグループホームです。

  グループホームというのは、障害者が家族から離れて自分の生活を創りだしていくために生まれたものです。多くは地域の中で小規模な集団住宅をつくり、食事をはじめとする支援を受けながら生活していくものです。昼間は障害者の作業所に通うことが多くなっています。運営主体さえしっかりとしていれば、障害者の親が亡くなった後も安心して委せることができるといった面も持っています。

   一般的には、多くの人は社会人となると経済的にも自立して、独立した生活を営んだり自分の家族を持ったりします。しかし現在の社会では障害者がすべてにわたって自立して生活を営むことは困難な状況です。そのために障害者が生涯を過ごせる場が必要となってきます。勿論、一生を家族とだけで暮らすことは理想ですが、そうはいかない家庭も多くあります。大規模な障害者の施設もありますが生まれ育った環境をできるだけ維持したいと考えると、やはり地域の中に小規模なグループホームをつくり、家族や友人、近隣住民と過ごしていけることが望ましいのではないでしょうか。

 

  グループホーム「ステップワンハウス ぱれっと」が誕生して4年になります。色々な問題を抱えながら、地域の皆さんとのつながりも少しずつ増えてきました。8月に夏祭りを開催したところ、多くの人たちに参加をしていただき、見学の希望もたくさんありました。そこで、この機会に更につながりを深めていくために「ぱれっと食堂」を企画しました。地域の皆さんは勿論のこと、多くの人たちと「みんなで楽しい食卓を!!」をキャッチフレーズに取り組みを進めていきたいと考えています。

 

   もう一つ、進めていきたいことがあります。いま全国で「こども食堂」が開かれてきています。「ぱれっと食堂」はそういった役割も担っていきたいと考えています。子どもだけの食事、ひとりぐらしのお年寄の食事、ひとの手助けがいる食事、そういった食事を日常とされている方々と共に「楽しい食卓」が囲めればそれはとても嬉しいことです。

   この「ぱれっと食堂」をできれば毎月開催していきたいと願っています。これからも色々な形でのご支援ご協力をお願いいたします。

 

  NPO法人ステップワン

 

ステップワン作業所     伊勢市楠部町16775  ℡ 0596236677

 

グループホームぱれっと   伊勢市吹上21146  ℡ 0596293330

 

 

これからのステップワン 

 

  2008年にステップワンはNPO法人となりました。1990年のアパートを借りての作業所開設に始まり、1993年には楠部町に作業所を新設、2004年の新道のお店「ステップワン」開店、2013年グループホーム「ぱれっと」開設と進んできました。

 

 どちらかというと理念先行型ともいえるステップワンが具体的な施設の運営まで可能になったのは会員はもとより、長年にわたり支えて下さったボランティアや市民の皆さん、行政や各組織の皆さんのおかげだと感謝しています。いま、ステップワンは大きな局面を迎えています。長年の願望だったグループホームを開設して3年が経過しましたが、未だ一棟しか完成していません。そのため、男性と女性が年度で交互に入居する形を取っています。当然このままでは充分ではありませんので、最低限もう一棟必要になってきます。しかし会員やボランティアの高齢化もあって、運営のための人材が不足しています。

 

 「必要度の高い人から入ってもらう」という理念のもと、グループホームもいわゆる「障害の重い」人から入居する形になりました。作業所にしろグループホームにしろ、すべての障害者が対象となるためには、この理念は大切なことだと考えます。ただ「すべて」ということになると、生活や支援のあり方が問われることになります。例えば、ごく一部の支援で生活が可能な障害者も「重い」とされる障害者も同時に住めるような住居スタイルが考えられないかということです。いま、シェアハウスとかサテライトいう形の住居方式が脚光を浴び、障害者の生活スタイルの模索が大きな課題となっています。

 

 2015年、ステップワン作業所のスタッフは大幅に新しくなりました。もう一度、原点に立ち戻り試行を重ねていくつもりでいます。今後ともご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

 

 

 

正 会 員   入会金 1,000円年  会費 3,000円 

   (この法人の目的に賛同して入会する個人又は団体)

 賛助会員   年会費 一口 3,000円 

 

   (この法人の事業を賛助するために入会する個人や団体)